ホープフルSはキラーアビリティが完勝

ホープフルSというのは興味深いレースで、2014年から中山2,000MでG2として始まり、2017年からG1昇格しましたが、今年を含めて全て勝ち馬は2着馬に1馬身1/4または1馬身1/2差をつけています。で、1・1/2馬身差をつけたのが2018年のサートルナーリアと2019年のコントレイル。どちらもその後直行した皐月賞を勝っています(コントレイルは3冠馬に)。今回のキラーアビリティは、1・1/2馬身差をつけた3頭目の馬になりましたので、縁起が良いです。小倉の未勝利7馬身差に比べるともの足りないと思うかもしれませんが、コントレイルだって東スポ杯の5馬身差からホープフルSは1・1/2馬身差でしたから、気にする事はないでしょう。それだけ、中山の2,000Mというのは、コース、距離とこの時期の芝の状態を考えると、2歳馬にはタフなレースなのでしょうね。その中で1・1/2馬身差をつけて勝てるのは、強い証拠なのでしょう。しかも、まだ8回目のホープフルですが、2分0秒6というレースレコードでした。2分0秒台がそもそも初めてです(コントレイルも2分1秒4)。直接の比較は難しいものの、1991年以降の阪神2,000MラジオNikkei(たんぱ)賞をみても、2分0秒台で走ったのはアグネスタキオン(2分0秒8)のみなので、それを含めても最速でした。ただ、タキオンは2着のジャングルポケットに2・1/2馬身差をつけ、3着はクロフネ、、超ハイレベルの年でしたが。。年毎の馬場の比較も難しいですし一概には言えませんが、今年のキラーアビリティの勝ちがかなりレベルが高い事は間違いないでしょう。ラップも、2ハロン目以降12秒2以内でおさめ、最後の2ハロンは11秒7-12秒4。コントレイルの2年前も似たような道中ラップですが、最後は11秒9-12秒5。直線の急坂を考えると、よどみない道中でも最後もよく走っていることがわかります。まあ、コントレイルは楽勝で福永騎手も確かムチは1発位しか入れていなかったので、追っていれば更に時計は出たとは思います。しかし今日のキラーアビリティも楽な勝ち方でした。いいスタートから好位をとれましたし、横山武騎手によると途中少しハミをかんだようですが、よく折り合っているようにみえました。3番手から4コーナーも楽に上がっていき、直線で武史騎手のムチも2~3発位で、楽勝と言ってもよいでしょう。ただ、パトロールビデオを見ると、最初右ムチで左によれ、次に左ムチに持ち替えて右によれていましたから、馬がちょっと若いですね。ムチが少ないのは、追いづらかった事もあるかもしれません。それでもあの勝ち方ですから、もっと体に芯がはいってくれば、どえらい強さになるのではないでしょうか。しかし武史騎手もムチの持ち替え見事です。勢いだけでなく、技術の裏付けもあるジョッキーですね。しかもレース後のインタビューがいつも若者らしからぬ非常に冷静で的確なコメントが多く、馬の事も良く把握していることがうかがえ、非常に将来が楽しみなジョッキーであります。全てにおいて父親よりも相当上のようです。

とにかく、今年は昨年のホープフルよりも大分レベルの高いレースをみせてくれましたが、2着も同じディープ産駒ジャスティンパレスで、ディープのワンツーとなり、結果ディープが2歳リーディングも逆転で仕留めました。これで全体のリーディングは10年連続10回目、2歳リーディングは2010年以来11回目(2015年のみダイワメジャーに譲り2位)と、驚異的な記録をまたのばしました。もっとも、今年の獲得賞金額は70億円に届かず、昨2020年は79億円だったので、約10億円減りました。贅沢なグチとはいえそこは残念ですが、是非来年は再び70億円を超え、サンデーサイレンス産駒の晩年にも負けないパフォーマンスをみせてほしいものです。まあ、キラーアビリティは順調であれば、皐月、ダービーの2冠はとるのではないでしょうか。心配なのは、今日メンコをしていたこと。クロノジェネシスもラウダシオンもメンコなしで出していた齊藤崇厩舎がメンコ付で出してくるとは、気性にかなり問題があるという事でしょう。本当の名馬にはメンコで走る馬はいないので、皐月賞では再びメンコを外して走れるように、成長してほしいものです。あと、前々走の未勝利2,000M→前走萩S1,800Mと一度距離を短縮してしまったこと。クラシックを前にしては、距離を伸ばしていくのが王道であり、短縮した馬は中々順調にはいきません。典型がサトノダイヤモンドきさらぎ賞で短縮、その後皐月、ダービーでは勝てず)でした。ディープは2,000M未満で走らせず、コントレイルも1,800M→2,000Mとステップアップしました。キラーも、前走の1,800Mは短すぎてとまどったのではないでしょうか。でも1,800Mで負けても2,000Mで、しかもG1で鮮やかに復活したので、そのような心配は杞憂と思いたいです。武史騎手も今日のインタビューで、「エフフォーリアも強かったがこの馬も強い」と同列で誉めていましたし、騎乗が決まった後調教には2週連続でのっていたようなので、相当ほれこんでいるのではないでしょうか。元々福永騎手が乗る予定だったらしいのが、ケガで回ってきたというのも運命なのでしょう。福永騎手でも上手く乗っていたと思いますが、武史騎手は単なる若武者ではなく、思慮深いテクニシャンでもあるので、是非乗り続けてほしいし、JCなどに出てきたらエフフォーリアと選択に迷うくらいの状況になってほしいと切に願います。

 

ところで2着のジャスティンパレス、またもCデムーロ!どこまでうまいのでしょうか、この騎手も!しかし直線で、ムチの度に大きく、キラー以上によれていたのがこの馬でした。それでも、武史騎手同様ムチを持ち替えてなんとか立て直しましたが、こちらは最初に大きく内によれてキラーの後ろにはいってしまったのが痛かったかもしれません。それでも2着に来るのだから、Cデムーロおそるべしですし、ジャスティンも強いのでしょう。対照的にコマンドラインはひどい競馬でした。スタートであおって後方からの競馬、最初の直線ではハーツ産駒のフィデルに何度もぶつけられ(川田さん、あれは故意??)、但しそれほどエキサイトはしていないようでしたが、あれが影響したのかしないのか、直線全く伸びませんでした。まあ、前走のサウジCはルメールの手腕で勝ったようなものでしたし、500キロ台の大型馬で、牡馬の育成が上手でない国枝厩舎ですので、信頼はしていませんでした。勿論ディープ産駒なので来てくれればそれなりに嬉しかったかもしれませんが、(少なくともこの距離では)キラーとの断然の実力差を見せつけられました。

とにかく、年の最後を素晴らしいディープ産駒のキラーアビリティが締めてくれて、良い年納めとなりました。