コントレイル(1)

コントレイルのレースを初めてみたのは、昨年11月の東スポ杯2歳S(G3)、グリーンチャンネルでみました。キャリアは新馬戦のみでしたが、その勝ちっぷりが評価されて一番人気。他にも有力馬はアルジャンナ、ラインベックとディープ産駒で、3頭ともに一流厩舎の馬だったことから、来年のクラシックを占う一戦として楽しみにしていました。

ところが、何とコントレイルがライアン・ムーア騎手を振り落として発走時刻が少し遅れたのにはびっくり。一番人気なのに除外かもとヒヤヒヤしましたが、馬体検査は問題なく発走となりました。ただ、ゲート前で騎手を振り落とすなんてとんでもない馬だ、これはコントレイルは来ないかな、などと思っていました。

ところが驚いたことに、そのコントレイルが手ごたえよく最後の直線に入ると、ムーア騎手の追い出しにこたえてあっさりと抜け出し、他馬との差を拡げるばかり。にもかかわらずムーアのしばきは止まらず、結局2位アルジャンナに5馬身差をつけ、タイムは1分44秒5の1800m2歳レコード!2位のアルジャンナ(1分45秒3)でもレコード更新なのに、それよりコンマ8秒早く走るとは、まさに驚きの連続のレースでした。

ゲート前の振り落としは一体何だったのだ、と今になってみると思いますが、単に気性が悪いわけでは当然なさそうです、むしろ普段は非常に大人しい馬らしいですから。これは私の想像ですが、ムーア騎手の何かの所作または命令がコントレイルのお気に召さなかったのでは、と考えます。ムーア騎手は割と馬へのあたりがハードなイメージがありますが、騎手が気に食わず見せしめに落としてみせるとしたら、、相当気が強いのか、賢いのか、自分をしっかりと持っている馬かもしれません。少なくとも世界のムーアを落とすなんて、いい根性をしています。

また、差が開いても追うのを止めなかったことについてムーア騎手は「追わないと気を抜くから」と答えていました。しかし、5馬身差のレコード圧勝にもかかわらず、ムチは1発も使っていませんでした。これも、普通では考えられないことです。正直、アルジャンナやラインベック(アルジャンナから更に4馬身遅れの3着)にムチなしでこれほど差をつけるとは思っていませんでした。しかし、振り落とされたにもかかわらず、馬の特性をすぐに見抜いて直線でムチを使わずに追い続けたのは、さすが”世界のムーア”と思いました。

次のホープフルS(G1)では、好位を進み直線難なく抜け出し、気の抜けたような脱力の走りに見えましたが、2着ヴェルトライゼンテに影を踏ませませんでした。ここでも福永騎手は、直線真剣に追っていませんでした。1発か2発、軽くムチを入れたように見えましたが、「直線気を抜くので、抜かないように」とのこと。2歳とはいえG1をこんなに楽に勝つのはすごいと思ったものの、着差が1・/1/2馬身であり、上がり3ハロンも最速タイですがヴェルトライゼンテと同じ35.8秒で、東スポ杯に比べると一見インパクトが弱くみえます。ただし、レースは結構厳しい流れだったようで、3着ワーケアはコントレイルから0.5秒差、4着ラインベックは同0.8秒差、そしてダービーでも健闘した9着のブラックホール(ダービー7着)は同1.9秒差、11着のガロアクリーク(皐月賞3着、ダービー6着)は何と同2.6秒差。このようにホープフルSは結構厳しいレースだったようで、それをゆるゆると勝ってしまうコントレイルは、やはりすごい馬なのでしょう。