ラヴズオンリーユーとグローリーヴェイズが香港G1を勝利

掲題の通り今日はディープ産駒が香港で輝きを見せました。しかし手放しで喜べないのは、香港スプリントにおける福永騎手の落馬(ピクシーナイト)があったからです。レースは、阪神JFと並行してオンタイムで見ていましたので、全く予想もしていなかった4コーナーでの事故には本当に驚きました。前の馬が突然故障し、後ろの馬が4頭も巻き込まれました。川田騎手(ダノンスマッシュ)はさっとかわしましたが(川田騎手の反射神経は本当にいい)、ピクシーナイトはその後ろの後ろで、巻き込まれた前の馬が死角になっており、かわし切れなかったようです。リプレイで見ると福永騎手が一番叩きつけられるように落馬し本当に心配でしたが、他の2騎手(一人はケガもなく後のレースにも騎乗)と共に容体は安定しているとのこと(香港ジョッキークラブ発表)ですので、それを信頼し、少しでもケガが軽い事を祈ります。しかしピクシーナイトは予想より後方で進めていましたが、4コーナーまでの手ごたえは抜群に見えたので、福永騎手は不運としか言いようがありません。コントレイルの引退の後に、こういう事が起こるとは、世の中一寸先は闇ですね。本当に、少しでも早く回復する事を願います。コントレイルとの出会いを経て円熟味が増した福永騎手の騎乗が見られないのは、寂しい限りです。

 

しかし、川田騎手はよくあの惨事をかわしました。あれで落馬していたら、香港カップ(2,000M)でラヴズオンリーユー乗れなかったでしょうから。そのラヴズは本当に強かった!道中は前目ですが内につつまれっぱなしで、直線も中々前があかず、その間に伏兵のロシアンエンペラーという馬に先に抜け出されるのですが、進路が空いてからの脚が凄かったです。外から、”マジックマン”モレイラ乗るヒシイグアスが猛然と追い込んできて、一旦は抜かれ「これはやられたか」と思うのもつかの間、内から抜き返しアタマ差の勝利!何たる勝負根性でしょう!ディープ牝馬の凄さを見せつけてくれましたが、それにしても今年海外G1で3勝目とは凄すぎます。ドバイ・シーマでも大健闘の3着ですし、今年は大ブレイクでした。しかしこれは、このようなコロナ禍にもかかわらず果敢に海外に挑戦する矢作厩舎からこそ出来た事だと思います。この馬は海外でも動じない強さがあるのと、日本より時計がかかる海外の方が向いているのでしょうね。適材適所の使い方をした矢作師は賞賛されるべきです。それに加え、”追える騎手”川田との相性が極上でしたね。今年初戦の京都記念からそれを思いました。今日も、モレイラに競り勝った川田騎手の追いは素晴らしいの一言!勿論、馬の本格化もあると思いますが、ディープ産駒が5歳になって本格化するなんて、嬉しい限りです。これで引退のようですが、グランアレグリア、コントレイルに次いでまたもディープ産駒のスーパーホースが有終の美を飾りました。引退は寂しいですが、勝っての引退は関係者にとっても嬉しいものでしょう。

 

香港ヴァーズ(2,400M)のグローリーヴェイズも見事でした。道中は後方2番手で彼にしては後ろすぎないかと心配でしたが、直線は外を怒涛の追い込み1馬身差をつけての優勝でした。ディープ牡馬で、6歳で海外G1を勝つなんて、これもとても嬉しい事です。外の方が馬場がいいのでしょう、香港を知り尽くすモレイラが自信たっぷりの騎乗で2年ぶり2回目のヴァーズ制覇、これで同馬は(香港)G12勝馬となりました。メジロラモーヌの血をひくディープ産駒で、本当にいい馬でしたね。去年の宝塚記念が順調さを欠いたためか(レーンの騎乗ミスもあったものの)大敗でしたが、それ以外は安定して走りました。これで引退して、是非種牡馬になってほしいものです。母系の血が魅力なので、意外といい子を出すかもしれません。

 

香港マイルは、ゴールデンシックスティーズが強すぎました。この馬、いつも後方ぶち抜きで、まるで香港版ディープインパクトですね。パドックから「ああ、いい馬だ」と思いました。騙馬なのがもったいなすぎます。香港ではなぜ皆騙馬にしてしまうのでしょうか。いずれにしてもここは、日本馬はサリオスの3着が最高と完全に脇役でした。期待したダノンキングリーはスタートが悪く、内でつつまれ、直線も内から一瞬出ましたが伸びず。しかしその後同じような位置からラヴズは伸びているので、やはりラヴズの凄さがわかります。

 

香港国際競走は、1日に4つのG1があり、一番賞金が安いヴァーズでも1着賞金11百万HK$(約1億6千万円)と天皇賞よりも高いのですから、中々すごいです。ジャパンカップの1着3億円は高い方(来年から4億円に上がる?)ですが、JC1レースしかないですからね。このような香港スタイルをまねても面白いのでは、と思いますが、そうすると海外から有力馬がどっとやってきて、日本馬にとっては厳しくなるかもしれません。しかし、そうやってこそ競争が生まれて日本馬も更に強くなり、競馬界にはプラスだと思うのですが。単に、日本には香港ほどお金がない、というだけの事なのかな。。

 

香港が盛り上がり、スプリントでの事故等もあって、阪神JFはすっかり影が薄くなりましたが、ウォーターナビレラ(3着)はよく走りました。スタートも抜群で好位をとり、直線は先に抜け出してあわやの競馬。抜け出しが少し早すぎたかもしれませんが、それでも3着に粘り、一番強いレースをして、一番良い競馬センスを見せたのはこの馬かと思います。しかし、武豊騎手の追いに迫力がなかったなあ。。川田騎手とかだったら、勝っていたのではないかと思うのは不謹慎でしょうか。しかし本当に堂々とした競馬ぶりで、シルバーステート産駒の株は更にこれで上がったことでしょう。他に牝馬ではロンが控えていますし。しかし、勝ったのはサークルオブライフ。エピファネイヤ産駒がまたG1勝ちを増やしてキズナに差をつけてしまいました。全体としてみると、エピファ産駒は勝ち馬率もE.I.もキズナより大分低いのですが、大レースでの勝負強さが際立ちますね。うーん、エピファの種付け料(1,800万円)は高すぎると思うのですが、こうしてみると、うなずかざるをえないでしょうか。キズナ産駒はエリザベス女王杯アカイイト)以降ここ数週間冴えがないので、心配です。ディープボンドは有馬記念に出れるでしょうか。出て、コントレイルの分もエフフォーリアを打ち負かしてほしいものです。