シャフリヤールがドバイシーマC制覇!(ドバイは日本馬が席巻)

メインのワールドカップ(ダート2,000M)に比べると賞金は下がりますが、それでも1着賞金3.48百万$(約4億1千万円)という芝レースでは世界最高レベルのレースであり、日本馬にとっては実質的に最高の栄誉といえるのがこのシーマクラシック(2,410M)。過去ステイゴールド(2001年)がG2時代に、G1昇格以降はハーツクライ(2006年)、ジェンティルドンナ(2014年)しか勝っていません。今回そのレースをシャフリヤールが8年振りに勝ってくれました。レースとしてはきわめてシンプルなレースで、オーソリティ(3着)の逃げを最内の2、3番手で進み、直線は前がパカっと空いて、前のオーソリティを交わし、外から猛追する人気のユビアー(ゴドルフィン)をクビ差抑えての優勝でした。Cデムーロらしい、ロスも隙も全く無い会心の騎乗でもありましたし、前述の通り展開にも恵まれましたが、クラシックディスタンスの2,400Mでこのようにしっかり勝ち切るのは容易ではありません。パドックでも比較的小柄ながら馬体が黒光りしてバネを感じる馬体でひときわよく見えました。英語ではシャリアー(Shahryar)と発音するのですが、ペルシャ語アラビア語に近い?)で偉大なる王との意味とのこと。そして母親はドバイマジェスティ。まるでドバイで勝つために生まれてきたような馬ですが、この馬が勝って地元の人は(ゴドルフィン関係者以外は)喜んでいるかもしれません(笑)。日本ダービー馬であるディープ牡馬が4歳にしてこのレースを勝ったという事に大きな意義を感じます。次走はどこに行くのかわかりませんが、あと1つ2つはG1をとってくれそうな感じもします、来年も5歳でシーマCに出られますし。ディープ産駒らしからぬスタミナの持ち主ですが、逆に言えばディープの良い所を最も体現している馬の1頭かもしれません。いつも僅差の勝利なので、ハラハラさせられますが、そこは全兄のアルアインと似ていますね(体つきは大分違いますが)。ただ一つ思うのは、いつも言いますが、本当にこの馬にメンコが必要なのかということです。藤原厩舎の必須アイテムなので、今更外せと言っても絶対に外さないでしょうが、超一流馬はメンコを付けないで走ります。ドバイのレース結果をみると、メンコ(H、Headの略か)やブリンカーなどを付けて走る馬は注記されています。それらはやはりハンデをもらっているようなものですし、走っている馬の素顔こそが美しいので、素顔をみせてこそ本当にファンもつくというものです。藤原厩舎はターフ(1,800M)でもヴァンドギャルドがあわや勝つかの猛追で3着に来ましたし、馬の仕上げは素晴らしいと思うのですが、「常にメンコ着用」は考え直さないと、チャンピオン調教師にはなれないと思います。その点は、今回の勝ち馬3頭ともメンコ無で臨んだ矢作厩舎を見習うべきです。

その矢作厩舎、昨日は大ブレークしました。まずはゴドルフィンマイル(G2ダート1,600M、1着賞金58万$)のバスラットレオン。ゲートの出は今一つでしたが、スタートダッシュでカバーして先手をとり、そのまま直線でも手ごたえよく、逃げ切ってしまいました。2着とは1馬身1/4でしたが、3着、4着にはそれぞれ3馬身半、4馬身の差をつけ、完勝といってよいでしょう。坂井瑠星騎手は、直線ムチを左右に持ち替えての追いと、ゴール後の投げキッスなど、まるで一流外人ジョッキーのようで実に格好良かったですね。一見キザですが、超真面目な瑠星騎手がやるとすごくはまっているのが面白い。長身でイケメンですので、外人のファンも増えたのではないでしょうか。英語でインタビューに応じてたのも素晴らしいです。瑠星騎手は私も一押しのジョッキーですね、今後の活躍が楽しみです。それにしても、バスラットレオンの復活は嬉しい限りです。NHKマイルでの落馬以降リズムの合わない競馬が続いていましたが、海外のしかもダートで復活するとは。おそらくダート向きだと適性を判断して出したのでしょう、矢作師の選択にはいつも敬服します。そしてキズナ産駒の海外での強さもあります。まだG1は勝っていないものの、先日のソングラインと昨年のディープボンドに次いで3勝目。海外で活躍した馬の子は海外で活躍するのは、血の成せる不思議な技ですね。

そして次のゴールドカップ(G2芝3,200M、1着賞金58万$)のステイフーリッシュ。前回のサウジでのレッドシーターフHも60kgを背負って4馬身差の逃げ切りは驚きでしたが、今回は更に驚きました。今回はハナをゴドルフィンの馬が奪い、内の好位で進めたものの道中ライバルのマノーボ(ゴドルフィンビュイック)に外からぶつけられ寄せられ、あわやラチにぶつけられるかと思いました。マノーボ、えらく行儀の悪い馬でしたが、まさかわざとではないでしょうね。どうもゴドルフィンの挟み撃ちに見えましたので。。とにかく、あれほどの不利を受ければ走る気をなくしてもおかしくないのですが、その後もルメールはじっと内で淡々と進めました。直線は前が開くのを待って抜け出しますがマノーボが再び迫り一度抜かれ、「ああやられたか」と思ったのもつかの間、内から抜き返し半馬身先着してのゴール。なんというタフさと根性でしょう。ルメールの冷静沈着な騎乗も光りましたが、馬に真の実力がないと、長距離でこのレースはできないでしょう。逃げなくても、先行でも勝てるようになりました。父ステイゴールドと同じく7歳での完全本格化。しかしこの血の開花を呼び起こした矢作マジックは本当に素晴らしいですね!海外の3,000M以上で2連勝となると、次はどこへ行くのか、とても楽しみです。天皇賞春はローテ的に無理でしょうか、いずれにしてもディープボンドの邪魔をしてほしくないなあ(笑)。矢作師はインタビューで、個人的希望としてはロイヤルアスコットゴールドカップ(G1、4,000M)に行きたいと言っていました。しかしこのレース、G1といっても賞金が非常に低いですね。1着賞金が多分3,000万円位ではないですか、日本のG3より低いです。欧州の落ちぶれを象徴するような額です。中々長距離となると使うレースが限られてくるとは思いますが、欧州にはいかなくてもよいのでは、行くならそれこそ賞金の高い凱旋門賞でも狙ってみたらと思います。ステゴの子ですから、オルフェーヴルのように重い馬場でも走ってしまうかもしれません。完全本格化した今なら、クラシックディスタンスでも走るのではないかと思わせます。暮れの香港ヴァーズを最終目標にでもして、あと何走か本格化した彼の走りを楽しみたいです。そしてステゴの正当な後継種牡馬になってほしいですね。

ターフ(G11,800M、1着賞金2.9百万$)もパンサラッサが1着同着で逃げ切り勝利。中山記念のように大きく離して逃げず、ため逃げのように見えましたので、これで直線持つかなとハラハラしてみていましたが、なんのその最後までロードノース(1着同着)を抜かせませんでした。吉田豊騎手ナイス騎乗でした。その2頭に外から猛然と迫ったのがディープ産駒ヴァンドギャルド!ゴール板を過ぎた後は完全に抜いていましたが、ハナ差の3着でしたが、しかし日本では今一つのこの馬ドバイに来ると大変身しますね。バルザローナもうまく乗ったと思いますが、この馬もシャフリヤールの単なる帯同馬ではない際立った走りをみせてくれました。今やすっかり矢作ファンの私ですが、ここはやはりディープに勝ってほしかったので惜しかったですが、日本馬1、3着なら上々の結果ですね。

メインのWCのチュウワウィザードもよく最後、断然人気のライフイズグッドを交わして川田騎手がよく3着に突っ込んできました。この馬も7歳馬なのによく走ります。キンカメ産駒はダートも本当に苦にせず、ここだけはディープ産駒のかなわない所です。

ちょっと残念だったのが、シーマCのグローリーヴェイズ。スミヨン騎乗がわかった時点で期待はしていませんでしたが、いいところなく8着に敗れました。香港ヴァーズは勝てても、やはりこのシ-マCはレベルが一段違ったということでしょうか。それだけにシャフリヤールの勝利はやはり格別ですが、グローリーヴェイズは引退して何とか種牡馬になってほしいです。メジロラモーヌの血を継ぐだけに、需要はあるはずですし、きっといい子を出すと信じています。